強直性脊椎炎について

どんな病気?

強直性脊椎炎は仙腸関節(せんちょうかんせつ)(お尻と腰の間のほとんど動かない関節)や脊椎(背骨)、股関節などに慢性的な炎症が起こる病気です。炎症によって痛みが起こり、骨の変化によりこれらの部位の動きが制限されます。
10~20歳代で腰やお尻の痛みで発症することが多く、45歳以上での発症は少ないといわれています。強直性脊椎炎でみられる腰痛は「炎症性腰背部痛(えんしょうせいようはいぶつう)」といわれ、じっとしていると症状がひどくなり、体を動かすと楽になるという、一般的な腰痛とは異なる特徴があります。

脊椎炎と仙腸関節炎の症状についての補足画像

原因は?

強直性脊椎炎の原因は不明ですが、遺伝的要因として、HLA-B27遺伝子と強い関連があることが明らかになっています。その他にも、腱や靭帯が骨に付く部位(付着部(ふちゃくぶ))への繰り返す負荷(機械的刺激)や腸内の炎症、腸内細菌の異常が関連することがわかっています。
付着部の炎症には、炎症を引き起こすサイトカイン(炎症性サイトカイン)が関係していると考えられています。サイトカインは本来は外敵から体を守ってくれる免疫作用を調節している物質ですが、免疫システムに異常が起こると炎症性サイトカインが過剰につくられ、さまざまな症状が現れます。炎症性サイトカインを阻害する治療により、炎症を抑えることができると考えられています。

  1. 遺伝的要因

    • HLA-B27

    その他の要因

    • 腱や靭帯の付着部への負荷(機械的刺激)
    • 腸内の炎症、腸内細菌の異常
  2. 炎症性サイトカインが増加し
    持続的な炎症が起きる
  3. 腰や背中、その他の関節の痛み、骨の変化
    腰や背中、その他の関節の痛み骨の変化の補足画像

HLA(human leukocyte antigen:ヒト白血球抗原)は白血球の血液型ともいわれ、免疫のしくみが自分と外敵を見分けるのに重要な分子です。
HLAにはA、B、Cなどいくつかの種類があり、さらにHLA-Bには数十種類の異なるタイプがありますが、HLA-B27はそのうちの1つです。

症状は?

通常、人の骨は古くなった骨を壊す細胞と新しい骨をつくる細胞がうまくはたらいて、骨の新陳代謝が行われています。しかし、炎症性サイトカインには骨を壊す細胞を増やす作用があるため、炎症が続くと壊れて骨が欠け(骨びらん)、骨をつないでいる靭帯に沿って新たな骨ができ(骨新生(こつしんせい))、関節がつながってしまいます(強直(きょうちょく))。痛みだけでなく動きの制限により、日常生活への支障が大きくなります。発症してから強直が生じるまでの期間は個人差が大きく、数年の場合も10年以上経過してからの場合もあります。

関節の症状

  • 腰や背中の痛み(腰背部痛)[体軸関節炎(たいじくかんせつえん)]の補足画像
  • 足、股、膝、肩関節などの痛み[末梢関節炎(まっしょうかんせつえん)]についての補足画像
  • アキレス腱、足裏など(腱や靭帯が骨に付着する部分)の痛み[付着部炎(ふちゃくぶえん)]についての補足画像

関節以外の症状

  • 痛み、充血、かすみなどの眼の症状[ぶどう膜炎]の補足画像
  • 腸の炎症による腹痛、下痢、血便についての補足画像
  • 皮膚の赤みや盛り上がり、かさかさした皮膚のはがれ[乾癬(かんせん)]についての補足画像

診断と治療は?

強直性脊椎炎は、症状、診察所見、血液検査所見、X線検査やMRI検査などの画像所見、HLA検査などから総合的に診断されます。
治療は運動療法と薬物療法が中心となります。お薬の選択については、医師が患者さんと相談のうえで病状や副作用、併存症などをふまえて、決定します。

*保険は適用されません。

  • 運動療法

    規則的な運動やストレッチなどを行うことがとても大切です。
    運動療法は指導者のもと、屋外や水中で行うことがよいとされています。

  • 薬物療法

    • NSAID(エヌセイド)
      (非ステロイド性抗炎症薬)[飲み薬]

      痛みや炎症を抑える働きがあり、強直性脊椎炎では最初に使われるお薬です。

    • 抗リウマチ薬[飲み薬]

      関節リウマチにも使用されるお薬で、手足の関節炎を抑えます。

    • 局所ステロイド[局所注射]

      症状のある関節局所に注射し、炎症を抑えます。
      関節炎や手首・足首、かかとなどの炎症が続く場合、使用されることがあります。

    • 生物学的製剤[皮下注射もしくは点滴]

      NSAID等で効果が不十分であった場合、使用されます。
      IL-17阻害剤、TNFα阻害剤の2種類があり、
      それぞれIL-17、TNFαという炎症性サイトカインの働きを抑え、症状を緩和します。

    • JAK阻害剤[飲み薬]

      炎症性サイトカインが過剰につくられないよう、細胞内のシグナル伝達を阻害するお薬です。

  • 手術

    股関節の痛みや障害、脊椎の変形や障害に対して手術を行うことがあります。

強直性脊椎炎の治療目標は?

強直性脊椎炎では、症状を緩和して身体機能を改善する、さらには関節以外の症状や合併症を抑えることにより、QOL(生活の質)をよい状態に保つことが最も重要な治療ゴールとなります。
そのために、疾患活動性(しっかんかつどうせい)(炎症による症状)を抑えることを目的に治療を行います。病勢の評価にはASDAS(アスダス)やBASDAI(バスダイ)という指標を用い、疾患活動性がない状態である「ASDAS 1.3未満」や、それに近い状態を目標にします。
目指す目標に向けて、医師や医療スタッフと情報を共有し、話し合いながら、治療を進めていきましょう。

強直性脊椎炎疾患活動性スコア

ASDASAnkylosing Spondylitis Disease Activity Score
強直性脊椎炎疾患活動性スコアASDASについての補足画像

①首/背中/腰の痛みの程度、②関節(首/背中/腰以外)の痛みや腫れの程度、③朝のこわばりが続く時間、④患者さんによる全般的な評価、⑤高感度CRP(炎症や感染症を調べる指標)の5項目を合わせ、特別な計算式に当てはめてスコアを算出します。

バース強直性脊椎炎疾患活動性指標

BASDAIBath Ankylosing Spondylitis Disease Activity Index

過去1週間について、①疲労の程度 、②首/腰/背中/殿部の痛みの程度、③関節(首/背中/腰以外)の痛みや腫れの程度、④触れたり押さえたりすると痛む部位の不快さの程度、⑤朝のこわばりの程度、⑥朝のこわばりの持続時間の6項目を患者さんが主観的に評価して計算します。

注)リンヴォック®の適応症は「既存治療で効果不十分な強直性脊椎炎」です。