巨細胞性動脈炎とは
どんな病気?
巨細胞性動脈炎は、大動脈とそこから分かれる側頭動脈(側頭部を走る動脈)や眼(がん)動脈(目に血液を送る動脈)などに炎症が生じることで症状が起こる病気です。
突然発病することも多く、個別の血管の炎症や、炎症によって血管が細くなったりつまったりして起こる症状の他、全身の症状もみられます。
発症する年齢は50歳以上で、60~70歳代にピークがあり、女性がやや多いといわれています*。

*日本循環器学会 他:血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版)(2018).
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_isobe_h.pdf(2025年6月閲覧)p.28
原因は?
巨細胞性動脈炎の原因ははっきりとわかっていませんが、遺伝子による遺伝的要因や、微生物感染・喫煙などの環境要因が関与して、免疫システムに異常が起こることで発症すると考えられています。
動脈の炎症には、炎症を引き起こすサイトカイン(炎症性サイトカイン)が関係していると考えられています。サイトカインは本来は外敵から体を守ってくれる免疫作用を調節している物質ですが、免疫システムに異常が起こると炎症性サイトカインが過剰につくられ、さまざまな症状があらわれます。炎症性サイトカインを阻害する治療により、炎症を抑えることができると考えられています。

症状は?
巨細胞性動脈炎では、全身の症状と、個別の血管病変によって起こる症状や脳梗塞などがみられます。また、リウマチ性多発筋痛症※を併せて発症することもあります。
全身の症状
※リウマチ性多発筋痛症とは
全身の症状、筋肉の症状、関節の症状がみられ、特に起床時の痛みとこわばりが特徴の炎症性疾患。巨細胞性動脈炎とリウマチ性多発筋痛症は併発することが多く、この2つは同じ種類の病気と考えられています。

個別の血管病変によって起こる症状

診断と治療は?
診断
巨細胞性動脈炎は、症状、診察所見、側頭動脈の触診、血液検査所見、血管超音波検査、CT、MRIなどの画像検査、眼科検査、生体検査※などから総合的に診断されます。また、血管病変の範囲を調べるため、PET検査を行うこともあります。
※生体検査:病変の組織(細胞)を採取して、顕微鏡で調べる検査

治療
治療は薬物療法を行います。お薬の選択については、医師が患者さんと相談のうえで病状や副作用、併存疾患(現在もっている他の病気)などをふまえて、決定します。
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●副腎皮質ステロイド薬[ 飲み薬、点滴]
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症状を速やかにコントロールするはたらきがあり、巨細胞性動脈炎では最初に使われるお薬です。
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●免疫抑制薬[飲み薬、皮下注射もしくは点滴]
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ステロイドで効果が不十分であったり再燃した場合などに使用されることがあります。体内で起こっている過剰な免疫反応や炎症反応を抑えるはたらきがあります。
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●生物学的製剤[皮下注射]
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ステロイドで効果が不十分であったり再燃した場合などに使用されることがあります。IL-6という炎症性サイトカインのはたらきを抑えるIL-6阻害剤で炎症を緩和します。
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●JAK阻害剤[飲み薬]
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ステロイドで効果が不十分であったり再燃した場合などに使用されることがあります。炎症性サイトカインが過剰につくられないよう、細胞内のシグナル伝達を阻害して炎症を抑えるお薬です。
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●抗血小板薬[飲み薬]
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血小板のはたらきを抑制することで、動脈の血栓の生成を予防するお薬です。動脈の流れ道が狭くなった場合に、失明や脳梗塞を予防するために使用されることがあります。
注)リンヴォック®の適応症は「既存治療で効果不十分な巨細胞性動脈炎」です。