リンヴォック® 潰瘍性大腸炎でリンヴォック®を服用される患者さんへ

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潰瘍性大腸炎とはどんな病気?

大腸に炎症をきたし、血便や下痢、腹痛などの症状がみられます

潰瘍性大腸炎は、大腸に慢性的な炎症をきたすために、大腸の粘膜にむくみや潰瘍、出血などが起こる病気です。血便や下痢、腹痛などの症状が続き、発熱やだるさなどの症状がみられることもあります。
近年はさまざまな働きをもつ治療薬が登場しており、適切に治療をすることで、症状が落ち着いた状態を保つことが可能になってきています。

よくなったり(寛解)、悪くなったり(再燃)をくり返す病気です

潰瘍性大腸炎は、症状が落ち着いている時期(寛解期)と、再燃して症状がみられる時期(活動期)をくり返すことが多いという特徴があります。
寛解期には、病気がない人と同じように日常生活を送ることが可能ですが、体調の変化など、何かのきっかけで再び症状が悪化してしまうこともあるため、再燃を防いで寛解を維持するための治療を継続することが大切です。

潰瘍性大腸炎の経過

治療と通院を継続することの大切さ

症状が落ち着いていても大腸の炎症は続いています

潰瘍性大腸炎の再燃を予防するためには、大腸の粘膜の炎症がほぼ正常にもどった状態を目指すことが重要です。治療によって症状が落ち着いていても大腸の粘膜には炎症が残っていることがありますので、症状だけでなく、内視鏡検査をして大腸の状態を観察することも大切です。

症状の経過と粘膜の炎症

鈴木康夫 IBD research 8, 3: 207-210(2014)より改変

治療と定期的な通院を続けることが重要です

つらい症状があるときはお薬をきちんと飲めていても、症状が落ち着くと、「もう飲まなくても大丈夫なのでは?」と思うこともあるかもしれません。
しかし、治療をやめてしまうと、症状が再発したり、悪化したりすることも少なくありません。お薬による治療で症状が改善しない場合には手術が必要になることや、長い期間にわたり炎症が持続することでがんを発生させることもあります。
症状がみられなくても、お薬をきちんと飲み続けること、定期的に通院して検査をし、大腸の炎症の状態を観察していくことを忘れないようにしましょう。

治療のために必要な検査

潰瘍性大腸炎を診断するために、また診断後に重症度や炎症が起きている場所を確認して治療方針を決めるために、さまざまな検査をおこないます

問診

便の状態(血便の有無、下痢など)や排便回数、腹痛などの症状について確認します。また、お薬の影響で腸炎の症状がみられることもあるため、服用しているお薬などについても確認します。

血液検査

採血をして、貧血の有無、炎症の程度、栄養状態の評価など全身の状態を調べます。

便検査

ほかの病気と区別するために、細菌などによる感染や出血の有無(血便)を調べます。また、便の中のカルプロテクチンという物質の量をみることで腸の炎症の程度を確認することもあります。

大腸内視鏡検査

大腸の炎症が起こっている場所や炎症の広がり具合、程度を調べます。この検査のときに、粘膜組織の状態を詳しく調べる「生検組織検査」のために、大腸粘膜の組織を採取することもあります。

注腸X線・腹部超音波・CT・MRI検査

大腸の様子を画像で確認し、炎症の範囲や程度などを調べます。肛門から入れた管から造影剤を注入して腸の状態を詳細に調べる注腸X線検査のほか、腹部超音波検査やCT検査、MRI検査をおこなうこともあります。

治療法と治療の進め方

病気のタイプや重症度に応じて治療をおこないます

潰瘍性大腸炎の治療は、寛解を導入するための寛解導入療法をおこない、寛解が得られたら再燃を防いで寛解を維持するための寛解維持療法をおこないます。
寛解導入療法では炎症の広がり方によって治療法が異なります。直腸炎型では5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤で治療を開始し、改善しない場合はステロイド局所製剤に変更します。それでも改善しない場合は、ステロイド経口剤に変更します。ステロイド剤は、改善がみられたら用量を少しずつ減らし(漸減)、ステロイド剤の中止を目指します。中止できない場合は、免疫調節剤を使用します。それでも改善がみられない場合や体に合わない場合は、生物学的製剤、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤、血球成分除去療法、免疫抑制剤などへ変更します。
左側大腸炎型または全大腸炎型では、軽症の場合は5-ASA経口剤を中心に、必要に応じて5-ASA局所製剤やステロイド局所製剤を追加して治療を開始し、改善がみられなければステロイド経口剤に変更します。中等症以上の場合は、ステロイド経口剤や点滴で治療を開始します。いずれの場合も改善がみられた後は、ステロイド剤の中止に向けて漸減をおこない、その後の流れは上記と同様です。ステロイド剤で改善がみられなかった場合は、生物学的製剤、JAK阻害剤、血球成分除去療法、免疫抑制剤などへ変更します。

猿田雅之編. 慈恵医大・猿田式 診療所で見極めるIBD診療. 日本医事新報社. 2023. P134-135 より作図

腸の炎症はどのように起こりますか?

炎症を引き起こす物質が過剰に作られることでつらい症状が慢性的に起こります

潰瘍性大腸炎の患者さんの大腸では、炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)が大量に産生されています。炎症性サイトカインの刺激により、腸の粘膜が傷つくことで、下痢や血便、腹痛などの症状が引き起こされます。
また、炎症性サイトカインが免疫をつかさどる細胞の表面にある「受容体」に結合すると、細胞の中に信号が伝えられ、さらに多くのサイトカインが作られるようになります。このくり返しにより、炎症は慢性化していきます。